小学4~6年生を対象とする海とお魚の探究ワークショップ「さかなクン探究隊(主催:SD BlueEarth・青い地球を育む会)」は海の魅力と豊かさをわかりやすく伝え、正しい海の知識や環境保全の重要性を広めることを目的とし、海への関心と探究心を育み、未来の海を守る行動につなげる学びの場をつくるプログラムです。第7回は表現することの楽しさ面白さを探究する回として東京藝術大学とコラボレーションしワークショップを行いました。第6回までの海洋の専門家による授業とは視点を変え、自分らしく絵を描くことへの探究心を忘れないさかなクンや日比野学長との対話などを通じて、「表現する楽しさ」を体感的に学ぶ機会となりました。
さかなクンと日比野学長の特別対談
絵を描くことがとっても好きなさかなクンと日比野学長。日比野学長が瀬戸内海に潜った体験談で話が盛り上がりました。瀬戸内海での潜水中に、レンガを運搬中に沈没した昔の船を発見したことがあるといいます。「落とし物として警察に届けましたが当然持ち主は見つからなかった。いつかこのレンガを使って、海のなかにゾウのアート作品をつくってみたい」と、海とアートを結びつける夢を語りました。そもそも日比野学長が海中で絵を描き始めたきっかけは、「海が好きだから、海の中そのものをキャンバスにしたかった」という思いから。海の中で絵を描くことに何度もチャレンジしたそうです。普通の紙を使ったり、ペンのインクが滲んだりと失敗を重ねました。しかし、水に強いユポ紙とプラスチックダンボールの画板、クレヨンを組み合わせることで、ついに水中作画を実現しました。「海のなかで描いていると、漁師になって魚をとっているような感覚になります。波のゆらぎや泳ぐ魚の動きは、その場でしかつかめないもの。図鑑で見る世界とはまったく違う景色が広がります」
「一緒に海にもぐってみたい人?」さかなクンの呼びかけに、探究隊のメンバーたちは一斉に手を挙げました。海の世界をもっと近くで感じてみたい。そんな気持ちを引き出したのが、日比野学長の体験談でした。
「プラごみをアートに変える」 アーティスト 藤元明さん
今回はアーティスト2名を講師に招き、体感型のレクチャーとし海を学ぶだけでなく、子どもたちが感じる力を育むことを大切にしました。一人目は東京藝術大学出身のアーティスト・藤元明さんです。2019年から海に流れ着くプラスチックごみを使ったアートプロジェクトを続けています。藤元さんはまず、世界中の海をめぐる海流を調べ、海ごみがどのように流れるかを調べました。そしてプラスチックごみが山のように積もる浜辺を見つけ、浜辺に道具を持ち込み、作品制作を行ってきました。集めたごみは約200度まで加熱しながらプレス、それぞれのごみが持つ色や質感が混ざり合い、平らな素材へと変えられます。抽象絵画のような鮮やかでエネルギーに満ちたアート作品が生まれ変わります。「海のごみは、海流と海岸の地形で集まるスポットがあり、人があまり行かない海岸にたまってしまうことが多いと分かります」と藤元さんは語ります。完成した作品を前に、メンバーやさかなクンからは「これ、本当にごみからできているの?」と驚きの声が上がりました。藤元さんは、「ごみがアートに生まれ変わること自体には価値がありますが、それだけで海ごみ問題が解決するわけではありません」ときっぱり語ります。「アートは時代を映す問いである」藤元さんはメンバーにアートとは何かを伝えてくれました。
「すギョい さかなの帽子をつくろう!」 丸山素直さん
二人目のアーティストは東京藝術大学美術学部デザイン科准教授の丸山素直さんです。お題は「すギョい さかなの帽子をつくろう!」。メンバーは持ち込んだ図鑑などを参考に大好きな魚を表現できることにワクワクしていました。「大切なのは、“こんな魚がいたらいいな”と想像することです。私は大好きなサケを帽子にしてみました。本物のサケはグレーで地味ですが、この帽子のサケはカラフルな色が大好きで、水のなかで鮮やかな生き物を食べるたびにカラフルになっていく魚なんです。自由に考えてみてください」丸山さんの言葉に背中を押され、メンバーもさかなクンも創作に没頭、時々作品を見せ合いながら夢中で手を動かしていきました。完成した帽子はどれも個性豊か。きらきら輝くタチウオや金色のナマズ、短いうつぼなど、メンバーの魚の知識と愛着が溢れた多彩な作品が仕上がりました。
今回のさかなクン探究隊@東京藝術大学では、海を「知識として学ぶ対象」ではなく、「入り込み、手を動かし、想像する場」として体験する時間が生まれました。海の中で描くという身体感覚から始まり、海洋プラスチックごみを素材にしたアート、そして自由な発想でつくるお魚帽子づくりまで、「科学・環境・創造」が自然につながり、メンバーそれぞれの中に「大好きな魚たちが住む海の芸術的な魅力や環境問題などの深刻さ」が立ち上がっていきました。アートは問題を解決する答えそのものではないけれど、問いに出会う入り口になる。見て、触れて、つくることで、海の美しさと同時に現実にも向き合う。その往復運動こそが、この探究の最大の成果だったと言えるかもしれません。海とアートのあいだで生まれた小さな驚きやワクワクは、これからの学びや行動へとつながることを期待しています。
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